貨物自動車運送事業法に違反したらどうなる?3つの行政処分について解説
運送業を営むには貨物自動車運送事業法に則った運営をしなくてはなりません。
もしもこの法律に違反することがあれば、3種類の中からいずれか当てはまる行政処分が処されますが、今回はどんなことがどの処分に該当するのかをわかりやすくお話いたします。
貨物自動車運送事業法とは
ここでは貨物自動車運送事業法について簡単に説明いたします。
貨物自動車運送事業法
この法律は運送業の「種類」「許可」「安全確保義務」について規定した法律です。
それまでは道路運送法という法律の規定がありましたが、これとは分離して貨物運送だけに特化した法律を新たに設置しました。
以前であれば運送業を行うには免許を取得しなければなりませんでしたが、この法律では許可制になったり、運賃に関しても届出制にするなど、若干規制を緩和した内容になっています。
一方で安全規制は強化されている法律です。
貨物自動車運送事業法に違反するとどうなるの?
もしも貨物自動車運送事業法に違反してしまった場合、貨物自動車運送事業法に則ってどの法律に違反したのかを精査し、それぞれに定められた違反に応じた罰則を受けなくてはなりません。
違反した内容に応じて運転免許と同様に点数が減点されていきます。そして累積加算され上限に達すると行政処分が下されることになります。
最悪の場合は運転免許証と同様に許可が取り消しになってしまうこともあります。
たまに運送業界でナンバープレートが取り上げられたといった話は、許可の取り消しのことを表していたりします。
車両停止処分
ここでは車両停止処分についてご紹介いたします。
車両停止処分とは
処分日車数制度といって、処分の対象となった車両のナンバープレートが一時的に取り上げられる処分です。ナンバーを取り上げられた車両はナンバープレートが無いので仕事で使用することができません。
もちろん一時的なものですが、所有している車両の数に応じて決められるので、売上を大きく左右する可能性もあります。
違反内容によって軽重は変わりますが違反が大きければ大きいほど日数も長くなりますし台数も多くなります。
車両停止処分になる違反の例
この処分に該当する違反は以下の通りです。
- 帳票類の改ざん
- 点呼の一部未実施
- 3名以上の運転適性診断の未実施
それぞれを簡単に説明すると、事業を行う上で帳票といって記録を残さなくてはならないものがあります。
これらの帳票を記載忘れしていたり都合の悪い事を改ざんしたりといった内容です。
点呼は毎日行わなければならないのですが、点呼を忘れていたりしていなかったりした場合が該当します。
ドライバーは運転適性診断を実施しなくてはなりませんが、これをしていなかったりした場合に違反とみなされます。
違反点数の累積
違反点は3年間累積し、その累積点数だけの処分が下ります。
処分日数車は10日が1点として管理されており、あまりにも点数が加算されると重い処分に処される可能性もあります。
ボーダーラインは12点です。111日車以上の場合は切り上げになるので12点が付与されてしまいます。
12点以上になると増車したい時などに認可がすぐに下りず、見込める収益を上げることが難しくなります。
事業停止処分
ここでは事業停止処分についてご紹介いたします。
事業停止処分とは
この処分は悪質であるとみなされた場合や重大な法令違反をしたとみなされた場合に下る処分で、一定期間事業ができなくなるという処分です。運送事業法違反の中でも重い処分であることは間違いありません。
この処分が下った場合、基本的に30日間の間つまり1カ月の間は運送業者としての活動は禁止となります。
というのもこの処分が下る違反が事業者として認められていない環境であるからで、本来なら認可されない状況だからです。対象となる車両は緑ナンバーの車両全てです。
事業停止処分になる点数
事業停止処分は違反累積点数が51点以上になってしまった事業所です。
他にも30点以下であっても270日以上の日車数が付された場合も同様に処分を受けます。他には31点以上の事業者で同営業所内に180日車以上の処分日数が付されている場合も同様の処分が下ります。
51点以上~80点以下の場合は一発で一定期間の事業停止処分を受けてしまいます。
ちなみに51点~80点未満の場合は営業所の管轄区域内全ての営業所が対象となります。
事業停止処分になる違反の例
違反の例は以下の通りです。
- 運行管理者の未選任
- 整備管理者の未選任
- 全運転者に対して点呼未実施
- 監査拒否や虚偽の陳述
- 名義貸しや事業の貸渡し
- 乗務時間の基準に著しく違反した場合
- 全ての車両の定期点検整備の未実施
ご覧のように、運送業を営む時に必要不可欠な運行管理者や整備管理者などの選任をしていなかったり、安全運転義務に明らかに違反しているケースが含まれています。
もちろんこの他にも違反点数が累積している場合も事業停止処分となるケースもあります。
例えば運転者が酒酔い運転をしたケース、酒気帯び運転をしたケース、薬物投資用運転をしたケースなどでは14日間の処分日車数が付されます。
7日間又は3日間の例は以下の通りです。
- 過労運転
- 無免許運転
- 大型自動車等無資格運転
- 過積載運行
- 最高速度違反行為
- 救護義務違反
許可取消処分
ここでは許可取り消し処分についてお話します。
許可取消処分とは
最も重い処分で、この処分が下ると運送業としての仕事が期間関係なくできなくなります。つまり許可が取り消しなのでそれ以降は会社としての全ての活動ができなくなってしまいます。
何度も何度も注意されても一向に改善されていなかったり、過去に何度も事業停止処分を受けてしまっている事業者が対象となります。もちろんすぐにこの処分が下ることはありません。
しかしながら、運送事業を営む最低限の決まりを守れない事業者だというレッテルが貼られたということですから、その後再び事業を始めるのは難しくなるでしょう。
許可取消処分になるのは
この処分が下るのは2年間で4度目の事業停止処分を受けた事業者です。
[過去2年間に3かいの事業停止処分を受けていた事業者で]- 累積違反点数30点以下270日車以上の処分を受けた
- 累積違反点数31点以上180日車以上の処分を受けた
- 累積違反点数が51点以上の処分を受けた
これに当てはまる事業者が許可取り消し処分となるのです。
よく3度目の正直という言葉がありますが、運送事業法では4度目の事業停止処分が決まった段階で運送業ができなくなってしまうのです。
[30日の事業停止処分になる具体的な違反例]- ドライバーの乗務時間が守られていない
- 運転者への点呼を実施していない
- 定期点検整備をしていない
- 整備管理者がいない
- 運行管理者がいない
- 名義貸し
- 事業の貸渡し
- 監査拒否、妨害、避ける、虚偽の陳述
許可取消処分になる重大な違反
許可が取り消しになるほどの重大な違反とは何なのか?許可が取り消し処分になるのは上記したのとは別の違反もあります。その一つが『旅客運送』ですね。
通常貨物の輸送の許可を受けた場合には有償で人を乗せることはできません。もしも旅客自動車として運行する場合は『旅客自動車運送事業運輸規則』に則った許可を受けなくてはなりません。
一度注意されたにも関わらず過去3年間で2度処分を受けると許可取り消し処分になります。
また、許可を受けたのに1年以内に事業を開始しなければ処分を受けますが、それでも開始しなければ取り消し処分になります。
他にも所在不明の場合も同様の処分を受けますし、欠格事由に該当した場合も同様の処分を受けます。
貨物自動車運送事業法とウーバー
新型コロナウイルスの影響で、最近はデリバリーが繁盛している傾向にあります。そんな中で特に人気が集まっているのが『ウーバー』です。
多くの方がウーバーは荷物を運ぶので違反なのでは?と考えるようですがどうなのでしょうか?
ウーバーは誰でも参入できる配送サービスですが、日本ではアメリカのように車を使っての配送ではなく、自転車または125cc以下のバイクでの配送です。125cc以下のバイクは言動付自転車なので自動車ではありません。
ただし白ナンバーで配送などをした場合には罰則が科せられることもあります。
違反をした場合の罰則は1年~3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金かその両方になりますので、ウーバーを始める時は自転車又は125cc以下のバイクで行いましょう。
まとめ
今回は、貨物自動車運送事業法についてご紹介いたしました。
どんな事業所でも全く違反が無いということはあり得ないかもしれませんが、できるだけ一丸となって違反が加算されないよう努力、教育することは大事ですね。
この記事が運送事業法について知りたいという方のお役に立てれば幸いです。