運送業の行政処分は点数制度によって決まる!どのような行政処分が発生する?
運送業者の違反行為に対しては、点数制度を用いた行政処分が行われます。行政処分は累積した点数によって非常に重い処分も考えられるため、管理者は特に注意しておく必要があるでしょう。
今回はどのような違反行為にどのような違反点数が与えられるのか、また累積点数による罰則の種類や目安について知りたいと考えている方のために、運送業が行政処分を受ける際の点数について詳しく紹介していきます。
運送会社に対する行政処分とは?
運送会社に対する行政処分とは、悪質で重大な法令違反のあった運送会社に科される処分のこと。行政による監査の結果、法令違反が確認されたときに処分が下されます。
処分の内容には違反点数に応じたいくつかの種類があり、違反点数が大きければ大きいほど処分も重くなります。
なお、運送会社に対する行政処分とはいっても、処分の対象になるのは会社単位ではなく営業所単位です。複数の営業所を有する会社の場合、違反行為が発見された営業所のみが処分対象となります。
もっとも、処分対象となる営業所の出た会社には自然と監査の目も厳しくなります。
特に複数の営業所で行政処分が出ると、他の営業所にも監査の目が入る可能性が高くなりますので、どのみち会社としての改善努力が必要になるとは言えるでしょう。
どのような行政処分があるの?
行政処分の内容は3種類あります。それぞれどのようなものなのか見ていきましょう。
車両の使用禁止
一定期間、緑ナンバーを運輸局へ返納しなければならないという処分です。ナンバーを返納するわけですから、その車両は当然業務には使用できません。
この車両停止処分には処分日車数制度が採用されています。
1台の車両について1日運行停止することを「1日車」と計算し、停止期間は処分日車数および違反営業所に所属する事業用自動車の数に応じて決まります。
たとえば60日車の処分であれば、車両2台が30日ずつ使用禁止になるといった具合です。
社長停止処分が下される違反は、
- 「帳票類の改ざん」
- 「点呼の一部未実施」
- 「運転適性診断の未実施が3名以上」
など。
また、行政処分を科せられて3年以内に再違反した場合は処分日数が2倍になることにも注意が必要です。
200日車を超える車両停止処分を受けた場合は、地方運輸局のホームページ上で業者名が公表されます。
事業の停止
悪質または重大な法令違反を犯したとき、一定期間運送行為を行うことができなくなる処分です。この事業停止処分が科されると、基本的には30日間営業停止になります。
事業停止処分に該当する法令違反は、「運行管理者の未選任」「整備管理者の未選任」「常務時間の基準に著しく違反」「全運転者に対して点呼未実施」「全車両に対して定期点検未実施」「名義貸しや事業の賃貸し」「監査拒否、虚偽の陳述」などです。
また上記以外にも、違反点数の累積によって事業停止処分が科されるパターンも考えられます。
運送業許可の取り消し
運送業の許可そのものを取り消される処分です。行政処分の中でも最も重いものと言えます。
運送業許可の取消処分に該当するパターンは複数あり、
- 「累積違反点数が30点以下で270日車以上の車両停止処分を付された場合」
- 「累積違反点数が31点以上で180日車以上の車両停止処分を付された場合」
- 「累積違反点数が51点以上となった場合」
- 「過去3年間で81点以上の違反点数か課された場合」
が該当します。
他にも、
- 行政処分の命令に背いた違反がある
- 同一の事業停止処分を過去3年で2度受ける
など、悪質な法令違反が確認された場合も運送業許可取消処分の対象となります。
累積点数による行政処分の違いについて
行政処分の重さは累積点数によって変わってきます。それぞれの区分に対してどういった処分が科されるのか見ていきましょう。
累積点数20~30点
違反点数の累計が20点を超えると、運輸局のホームページ上に事業者名が公表されてしまいます。これをネガティブリストといいます。
運輸局のホームページは不特定多数の人が目にするものです。そのような場所に法令違反の業者として名前が載るわけですから、企業イメージは悪化します。
場合によっては顧客の減少を招き経営状態を悪化させるおそれもあるため、この時点でも事業者にとっては軽視できない処分であると言えるでしょう。
なお、ネガティブリストは四半期ごとに更新されます。
累積点数30~49点
累積違反点数30点を境に事業停止の要件が変わってくるため注意が必要です。
先述した事業停止処分の該当条件を見ていただければわかるとおり、累積違反点数が30点以下の事業者については、270日車以上の処分を付されなければ事業停止の要件に当てはまることはありません。
その一方で、累積違反点数が31点以上の事業者については、180日車以上の処分を付されると事業停止の要件に該当してしまいます。
累積点数50点以上
累積点数が50点を超えてしまうと直ちに事業停止処分になってしまいます。
というのも、累積点数が50点を超えるということは、3年の間に違反を重ねてなお改善が見られない悪質な事業者ということになるからです。
事業停止は営業所にとって非常に厳しい処分と言えますが、それもやむなしといったところでしょう。
違反が見つかった時点で対策を実施し、即座に改善することがいかに大切かわかろうというものです。
累積点数80点以上
累積点数が3年間のうちに80点を超えてしまうと運送業許可が取り消されます。先程述べたとおり最も重い処分です。
そもそも違反点数が80点を超えるということは、過去に少なくとも1度の事業停止処分を受けていることを意味します。
にもかかわらず改善が見られないということですから、事業を営む能力がないものと見なされてしまうのです。
違反点数がかさむ前に、専門家をコンサルに入れるなどして対策を施しましょう。
行政処分に関わる累積点数について
累積点数が加算される期間についても解説しておきます。
累積期間は?
違反点数は法令違反のあった営業所に対して付されます。運輸局単位で累計され、その期間は原則3年とされています。
つまり、違反点数を付されてから3年間新たに付加されなければ、0点から再スタートということになるわけです。
例外として、処分日以前の2年間に違反点数の付与がない場合や、安全性優良としてGマーク認定を受けている事業所の場合は、違反点数を付与されてから2年間無事故無違反を維持すれば点数がリセットされます。
事業者が変わっても点数は引継ぎ
違反点数はあくまでも営業所単位で累積します。したがって、事業者となる会社が変わっても営業所が同一であれば、前の会社から点数を引き継ぐことになります。
悪質で重大な違反ほど重い行政処分に
運送業における行政処分は、重大で悪質な法令違反と認められるほど重い処分内容が科せられます。
違反行為を繰り返したり、是正勧告に対応しなかったりすると、改善の見込みなしとして最悪の場合事業許可を取り消されてしまいます。改善は早めに行いましょう。
絶対に避けたい行政処分
累積点数による行政処分は、20点の時点でもネガティブリストの公表と、事業者にとっては決して軽視できないものとなっています。
先述のとおり、ネガティブリストは外部からでも確認できてしまうため、顧客からの信用の低下に繋がるからです。
事業停止や事業許可の取り消しに至らなくとも経営にダメージを受けかねませんから、行政処分を受けること自体をそもそも避けるようにすべきでしょう。
まとめ
運送会社に対する行政処分について、どのような処分があるのか、違反点数が累積するとどうなるのかといったことを解説させていただきました。
行政処分を科されると運送事業の継続にかかわる事態に繋がります。普段から法令を遵守し、くれぐれも違反を重ねることのないようにしておきましょう。