運送業界特有の無事故手当とは?事故をしない場合に貰える手当はどのくらいが相場?
ドライバーの給料には「無事故手当」と言われる運送業界特有の手当がつくことが多くなっています。
しかしその一方で、この無事故手当が運送会社とドライバーとの思わぬトラブルに繋がるケースも出てきています。
そこで今回は、無事故手当というのがどのような手当なのか、どのような理由でトラブルに発展するのかなど、わかりにくいドライバーの事故問題について解説します。
無事故手当って何?
まずは無事故手当の概要について押さえておきましょう。運送会社にとって、交通事故や貨物事故は業務を遂行するうえで必ずつきまとうリスクです。
いったんこのリスクが顕在化すると会社の信用に関わりますし、補償問題が発生するなど、多かれ少なかれ経営にも響いてきます。
そこでドライバーの安全意識を喚起するために設けられたインセンティブが、事故を起こさなかったドライバーに一定額の手当が支給されるという仕組み。この手当を無事故手当と呼ぶわけです。
注意すべきなのは、必ずしも無事故手当の制度がある会社ばかりではないという点。
トラブル回避のためなどの理由で無事故手当を導入していない運送会社も決して珍しくはありませんので、気になる会社があるようなら個別に調べてみることをおすすめします。
もし事故を起こしたら?
ところで、事故を起こしてしまった場合の処理はどのように進められるのでしょうか。無事故手当との関係も含めて確認してみましょう。
免責分の負担
先述のとおり、運送会社において事故のリスクは常に隣り合わせです。そのためリスクヘッジを図っていない会社は稀で、大半の運送会社は保険に加入しています。
したがって、基本的には事故の金銭的補償は保険処理によって賄われることになるでしょう。
ただし、保険の免責事項に該当する事故では保険料がおりませんので、そのケースではドライバーが支払うことになる可能性もあります。
支払金額は加入している保険の内容によって違いますが、相場としては5万~10万円程度が多いでしょう。
無事故手当はどうなるの?
無事故手当は事故を起こさなかった月に支給されるものですから、事故を起こしてしまった月には当然支給されません。
また、会社によっては不支給の期間もその月だけに留まらず、先述した免責分の支払いが終わるまで支給されないケースもあります。
手当がつかない期間は?
手当がつかない期間は会社がどのような制度を敷いているかによって変わってくるため、一概にこうとは断言できません。
事故を起こした翌月には再び支給が始まる会社もありますし、免責額の上限に達するまでの補填が終わるまでは支給されないところもあります。
後者のタイプの会社では、不支給の期間が数ヶ月~数年にわたることもあります。
運転手はどこまで支払いの義務がある?
ところで、事故を起こしてしまった運転手はどこまで補償する必要があるのでしょうか。法的に言えば、民法第709条の規定によって損害賠償が認められています。
つまり、ドライバー本人が金銭を負担するように会社が就業規則を定めることは、もちろん適法な範囲内においてではありますが認められているわけです。
問題は、どこまでが適法な範囲と呼べるかです。
最高裁の判例によれば、
使用者は、
「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、労働者に対し、右損害の賠償を請求することができるにとどまる」
とされています。これは「使用者としての責任分は会社が負担しなければならない」と解釈できます。
また、会社が加害行為の予防や損失の分散について事前措置を講じているかどうかも賠償額の程度に影響するとされています。
以上のことを総合して言えば、運転手の負う責任は運転手本人の過失分までということになります。
トラブルにつながることもある無事故手当
無事故手当は運送会社とドライバーとの間でトラブルを引き起こすこともあります。トラブルの原因となるのは、本来支給されるはずだった無事故手当が支給されなかった場合。
事故の損害をドライバーに全額負担させることが違法であるのは先に述べたとおりです。
また、労働者との合意なしに損害分を給料から天引きすることも法律で禁止されていますから、もし天引きがあったとすればそれはドライバーからの同意が示された場合のみということになります。この同意を巡ってトラブルになるわけです。
無事故手当にまつわる規定が会社側からドライバーに細かく説明されていなかったり、そもそも規定が明確でなかったりといった場合は要注意であると言えるでしょう。
トラブルを避けるために出来ること
では、無事故手当に関するトラブルを避けるためにはどうすればよいのでしょうか。
入社時に確認
まずは何と言っても入社の際に制度を確認しておくことです。
事故を起こした場合には
- 全額支給されなくなるのか
- 何割かがカットされるのか
- どれだけの期間支給されないのか
といった情報を会社とドライバーが共通認識として持っておけば、トラブルに発展するリスクを大幅に減らすことが可能です。
規定を把握しておく
もちろんドライバー自身が規定を把握しておくことも重要です。
社内規定が明確になっていれば規定の文言を確認するだけで済みますし、明確でないようなら管理者に尋ねるなどして、万一の際に備えておきましょう。
まとめ
今回は無事故手当について説明させていただきました。運送業界における給与体系の一角について理解を深めていただけたのではないでしょうか。
ドライバーとして活躍されている方、またこれからドライバーの職に就くという方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。