運送会社が行うべき健康診断とは?ドライバーの健康管理と安全運転
それぞれの運送会社は、自社のドライバーについて健康診断を受診させる義務があります。
通常業務のドライバーは年に1回、特定業務に従事する者には半年に1度、健康診断を受けさせなければいけません。
ここでは運送会社の健康診断と安全運転について紹介していきたいと思います。
ドライバーの健康管理の重要性
ドライバーの不足、高齢化などが進んでいることもあって、現場のドライバーの負担がますます大きくなっていると言われています。
トラックやバスなどを運転するドライバーが健康管理の不備から事故を起こす際などは他の車や歩行者、乗客などを巻きこんで大規模な事故になることが多く、社会的な責任という考え方もあります。
そのため、こういった事故を防ぐためにもドライバーの健康管理は欠かせないものなのです。
運送会社の健康診断
運送会社が行うべき健康診断
運送会社では「雇い入れ時」「定期健康診断」「特定従事者の健康診断」という3つの健康診断を行う必要があります。
健康診断は1年に1度、特定従事者は半年に1度受けなければいけません。これらの健康診断は病気の発見、自覚のためであり、その結果は5年間保存する必要があります。
健康診断の項目
健康診断は以下の11項目を行う必要があります。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
ドライバーの健康管理の中でも事故に直結しやすい脳出血、心筋梗塞などに関連する項目については特にしっかりと行われることになります。
これらの項目で異常が見つかった場合には二次健康診断を受けることになります。
雇い入れ時の健診とは
雇い入れ時に行う健康診断は上記の項目のものです。
- 入社3ヶ月前の結果まで有効(コピーも可)
- 費用については、一般的な法解釈としては事業者負担(ただし義務ではない
という条件がついており、事業者が負担することが多いのですが、会社によっては自分で健康診断を受けて、その結果を提出させるという場合もあります。
その後にかかった費用を支払ってくれるということもあります。
特定業務従事者とは
こちらは「22時から翌5時まで」という深夜帯に働くことがあるドライバーが該当します。
その基準は「6ヵ月を平均して1ヶ月あたり4回以上深夜帯(22時~翌5時)に運行があったかどうか」というもので、長距離ドライバーなどはほぼこれに該当します。
健康診断の結果をどう活用するか
健康診断で異常が出たドライバーには
健康診断の結果は個人情報ではあるが、会社は運行を安全に行う必要性があることから、その結果を見ることが可能です。
ただし、鍵のかかるところで保管する、見る人間を限定するといった配慮が必要となります。
異常項目については再検査を受ける、運転業務が可能かどうかを医療機関に確認する(書面で返答をもらうこと)といった対応があります。
ドライバーの健康について相談するには
会社に産業医がいる場合はそちらに相談をすること。
ただし、従業員が50人未満の小規模事業者の場合は、会社に産業医がいない場合が多いので、その場合は地域の産業保健センターで相談を受けてもらうことができます。
「配慮が必要」なドライバーには
健康診断の結果、「配慮が必要」と判断されたドライバーについてはそのまま同じように業務につかせることはでいません。
医師の判断に任せ、その回答によって就業上の措置を行います。その措置については、
- 労働時間の短縮
- 労働負荷の制限
- 深夜業務の削減
といったものがあります。あまりに健康状態がひどい場合には就業させずに療養させるということもあります。
ドライバーは労働時間が短縮されると収入が減るということを気にしますが、これに対しては健康状態が最優先であることを忘れないように対応しなければいけません。
配慮が必要な状態にも関わらず、そのまま勤務させていて事故などが起こった場合には会社の責任は非常に重いものとなります。
日々の業務で行うドライバーの健康管理
乗務前点呼
ドライバーが業務前に運行管理責任者の点呼を受けることになります。
点呼の際にはっきりと声を出して返事をすること、アルコールが抜けていることを確認すること、健康状態を確認するということが重要になります。
この時点で「おかしい」と感じた場合は運行させずに、健康状態が改善することを優先するようにしなければいけません。
運行管理者が行うべきこと
運行管理者はそれぞれのトラックの運行ルートや時間、配送内容などを確認するだけでなく、ドライバーの健康状態、持病、睡眠時間などを確認しておかなければいけません。
また、その時点で通院していたり、服薬している場合はその内容も確認しておき、それらが必要な場合には運行ルート、勤務時間などについて配慮をする必要があります。
特に健康状態が万全でない時に「睡眠不足」「アルコールが残っている」ということは非常に危険となります。必ず点呼時に確認しておきましょう。
疾病があるドライバーには
疾病、持病がある場合は診断書などを会社に提出させておく必要があります。
ただし、これは義務として提出させるものではなく、ドライバーの同意の上で提出するものですので注意が必要です。同時に、提出された診断書などの管理については厳重に行わなければなりません。
高血圧、糖尿病などの生活習慣が関係している病気については、日常生活での取り組みが必要となってきます。点呼時などに合わせて声をかけて確認しておくのが良いでしょう。
まとめ
ドライバーの仕事は非常に過酷なものです。また、積み荷や乗客などを運ぶ仕事ですので、事故を起こした際にはそれらはもちろん、周囲の車や歩行者までも危険にさらすこととなります。
ドライバーの健康状態は常に万全でなければならず、それを確認するための健康診断は欠かせないものとなっています。
必ず受診するようにし、その結果について真摯に対応していくことが重要だと言えるでしょう。