ダンプカーの構造/仕組みはどうなってる?知っておきたい名称や種類を解説

ダンプカーは、積荷を降ろしやすいように、ボデー部分が可動であるトラックのことです。土砂を運搬するリアダンプが有名ですが、ダンプカーには土砂の運搬を禁止した土砂禁ダンプもあります。

あおり、コボレーン、Lゲートといったダンプ車体の名称についても詳しくご紹介しています。

ダンプカーの構造

シャーシとボデー

トラックは、「シャーシ(シャシー、シャシ)」と「ボデー(ボディ)」からなっています。

自動車メーカーが作っているのはシャーシだけです。ボデー部分はボデーのメーカーが作っていて、それをシャーシに乗せているのです。

シャーシは、枠組みや骨格、土台のこと。そしでボデーは荷台部分です。この荷台の形状により、どんな荷物を運ぶトラックになるかが分かれます。

シャーシは単体で走行できますが、それに荷台が載ってはじめて「貨物自動車」として機能するわけです。

ダンプカーとは

「ダンプ」は英語にすると「dump」で、「投げ捨てる・どさっと落とす・中身を空にする」などといった意味を持つ言葉です。

ダンプカーは、その名のとおり「積荷をどさっと落とす」ボデーを架装したトラックです。一般的にトラックに積んだ荷物は、手作業やフォークリフト、クレーンなどで降ろします。

ところがダンプカーは、荷台を大きく傾けることによって、積荷をどさっとそのまま落とすことができるのです。

ダンプカーのボデーがあがる仕組み

ダンプカーは、エンジンの動力をPTO(後述)というシステムで作業用の動力に転換することで、その重い荷台を上げることができます。

ギアをニュートラルに入れてクラッチを切り、PTOスイッチを入れてダンプレバーを引きます。

その状態でクラッチを繋ぐと、油圧シリンダーにオイルが送られてピストンロッドが伸び、荷台が押し上げられるのです。降ろすときはダンプレバーを下げることで、荷台の自重によって下がります。

ダンプカーの構造で知っておきたい名称いろいろ

PTOとは

ダンプカーのように架装を動かす仕組みのあるトラックには、基本的に「PTO(Power Take Off)」というスイッチがあります。

自動車を走行させるためのエンジンから動力を取り出して、作業用の動力に転換する機能です。

ダンプカーは走行中には架装を作動させないので、停車時にのみ使用するPTOシステムが採用されていますが、ミキサー車や冷凍車のように常時動力を架装に伝えるPTOシステムもあります。

あおりとは

ダンプカーの荷台をぐるりと囲んでいる、衝立のような壁を「あおり」と呼びます。

一般的な平ボディトラックのあおりは下部を支点に外側へ倒れて開くようになっていますが、ダンプカーは積載したまま荷台を傾けて積荷を落とす構造上、

基本的には上部を支点にして外側に開くようになっていて、ダンプアップすると積荷の重さで自動的に開くようになっています(例外あり・後述)。

コボレーンとは

大型ダンプの側アオリの上に付いている、積載した土砂をこぼさないための自動開閉シートです。名前通り「こぼれん」ためのものですね。

コボレーンは中播自動車工業株式会社が製造している自動シートの名称ですが、今では他社製の自動開閉シートでも「コボレーン」と呼ばれています。

携帯音楽プレイヤーが総じて「ウォークマン」と呼ばれるのと同じ流れですね。

Lゲートとは

土砂を積載したダンプは、あおりの下部が開くようになっていることは先述しました。けれど砕石などの大きいものを積載する場合、あおりの高さよりも大きいものは、引っかかって落ちないこともあります。

そういった積荷を積載するダンプの場合、平ボディトラックと同じように上部が開くあおりを採用することで、スムーズに荷降ろしができます。

このようにあおり(ゲート)上部が開く構造を、荷台がL字に見えることから「Lゲート」と呼びます。

クレーン(ユニックダンプ)とは

ダンプアップする荷台だけでなく、クレーンまで付いているトラックがクレーン付きダンプです。ユニックダンプと呼ばれることもありますが、「ユニック」は古河ユニック社のクレーン付きトラックの登録商標です。

もちろんクレーンを操作するには、吊り荷などに応じた資格が必要です。

強化ダンプとは

標準のダンプの床板は厚さ3mm程度ですが、この床板が6mmになっているものが強化ダンプです。また、あおりを支える支柱が付いているものが多くあります。

強化ダンプには、小型であっても最大積載量が多く取れること、また、荷台を滑り落ちる土砂で床板が削られていくことに対応にできる等、大きなメリットがあります。

重ダンプとは

最大積載量が20t~300t以上にもなる、公道を走ることができないダンプです。ダムの建設現場や鉱山などで活躍するダンプカーで、公道を走行しないため車検はありません。

コマツ製の世界最大級の重ダンプ「930E」は、車体重量202t、全高7.2m、最大積載量297t。タイヤの高さだけでも3.8mという、家よりも大きい超巨大な重ダンプです。

荷台の構造別ダンプカーの種類/名称

リアダンプ

荷台の前部が上がり、後ろに傾くダンプがリアダンプ(リヤダンプ)です。最も一般的なダンプカーの荷台構造で、街で見かけるダンプカーのほとんどがこのタイプです。

荷台をダンプアップすることでほとんどの積荷を落とせますが、そのままの状態で最後に少し前進することで、荷台に乗った積載物をすべて落とすことができます。

雨や雪の日などは荷台に水が溜まらないよう、ダンプアップしたままの状態で駐車場に止まっている姿を目にすることもあります。

スライドダンプ(ローダーダンプ)

荷台が傾くだけでなく、そのまま後方へとスライドする機能を併せ持ったダンプトラックです。これによって土砂だけでなく、小型の建設重機や農耕具などを積載することができます。

荷台を接地するまでスライドさせ、あおりを開くことでスロープ状になり、ゆるやかに建設重機などを積み降ろしすることができます。

サイドダンプ、三転ダンプ

一般的なダンプカーは先述のとおりリアダンプですが、荷台が左右に傾くサイドダンプというものもあります。

大きなスペースがない場所での作業で活躍するだけでなく、左右に積荷を落としたい場合も方向転換せずに落とすことができます。

また、高さに余裕がなくてリアダンプではダンプアップできないような場所でも、横に傾くならばリアダンプほどには高くならないため、高さ制限のある場所でも活躍します。

さらにはサイドダンプをリアダンプに横付けして積荷を移すという使い道もあります。

このサイドダンプとリアダンプの両方の機能を兼ね備えて3方向にダンプアップすることができるダンプトラックが、三転ダンプです。

ダンプトレーラー

ダンプ機能を有したセミトレーラーやフルトレーラーです。大型ダンプよりもさらに多くの積荷を積載できるため、活躍の場は多数あります。

1999年12月には記載緩和が行われ、それまで不可とされていた土砂等の運搬も可能になりました。

また、2015年5月には道路運送車両の保安基準が改正されて、車両総重量や最大積載量の基準も緩和されました。これによって、より多くの積荷を運ぶことが可能となったのです。

ただし、ダンプトレーラーはその荷台の長さゆえに、ダンプアップしたときの高さはかなりのものになります。

深ダンプ

一般的なダンプよりあおりが高く、荷台が深くなっているダンプです。嵩張る荷物を積むのに適していて、廃棄物などの運搬に使用されています。

荷台が深いため積載できる質量は大きくなりますが、その深さに土砂等を積載してしまうと簡単に過積載になってしまうため、深ダンプの多くは土砂禁ダンプ(後述)です。

土砂禁ダンプについて

土砂禁ダンプとは

「土砂等運搬禁止車量」のことで、文字通り「土砂等の積載が禁止されているダンプ」です。基本的には深ダンプは土砂禁ダンプです。

車検証にも「土砂等運搬禁止車両」の表記があり、土砂に限らずガラスくずやコンクリートくず、陶磁器くず、がれき等といった重量のある廃棄物も運搬できません。

また、中には深ダンプではないにもかかわらず土砂禁となっているダンプも存在します。

大型土砂ダンプには「ゼッケン」と呼ばれるダンプナンバーを表示する義務がありますが、土砂禁ダンプにはこのゼッケンがなく、代わりに「土砂等運搬禁止車両」と表示されています。

土砂禁ダンプの種類

土砂禁ダンプは廃棄物の運搬などに使われることが多く、ペットボトルや落ち葉、ゴミなどを運搬する目的のものは「清掃ダンプ」と呼ばれています。リアゲートが観音式のものもあります。

牧草や畜産飼料、農作物の運搬などを目的に農園や牧場で使用されるダンプは「ファームダンプ」と呼ばれます。

ウッドチップを運ぶ深ダンプは「チップダンプ」と呼ばれます。チップは飛散しやすいため、シートなどで覆って運搬します。リアゲートは観音式や上開き、下開きなど用途に応じたタイプがあります。

まとめ

ひとくちに「ダンプカー」といっても、その用途に応じてさまざまなトラックがあります。けれど基本構造はみんな同じ、レバーを引いて「どさっと落とす」もの。

手積み手降ろしの仕事に疲れたら、ダンプカーの運転手を目指すのもいいかもしれませんね。

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