大型トラックのリミッターとは・解除はできる?ドライバーにとってはストレス?メリット?

平成15年より、大型トラックにはリミッター(速度抑制装置)の取付が義務付けられました。時速90キロで走ることを義務付けられることは、ドライバーにとってストレスの原因となることもあるようです。

リミッターの取付対象車両から、そのメリットまでをまとめました。

大型トラックのリミッターとは

リミッター(速度抑制装置)とは

「リミッター」とは、文字通り「リミット(制限)」をかけるもの。自動車に関していえば、車両の速度がある一定の速度に達したら、エンジンへの燃料の噴射を抑制して加速を制限する装置です。

この「一定の速度」は車種によって若干のバラつきがありますが、大型トラックのリミッターは90km/h付近で作動するように設定されています。

リミッターが作動すると、どれだけアクセルペダルを踏み込んでも、回転数も速度も上がらなくなります。

リミッター取付車両には、「速度抑制装置取付車」と表示された指定のステッカーが貼られています。

リミッターの取付対象車種

国内で製造販売されている自動車にはスピードリミッターが装着されていますが、法律で取付が義務付けられているのは、車両総重量8t以上または最大積載量5t以上の大型貨物自動車、大型貨物自動車を牽引する自動車です。

普通車のリミッターは解除しても違法性はありませんが、大型トラックは道路運送車両法でリミッターの取付が義務化されているので、解除または不正改造などは違法行為になります。

リミッター導入に至った理由

平成10年頃の高速道路での死亡事故原因は、その大半が速度超過の大型トラックによる追突事故でした。大型トラックの制限速度は、高速道路では80km/hです。

その制限速度を守らずに走行した大型トラックの追突死亡事故が多発していたため、このような重大事故を防止する目的として、90km/hで作動するリミッターの取付が平成15年9月に義務付けられました。

また、リミッターの取付には、CO2排出量の削減、燃費向上といった目的もあります。

リミッター導入後の事故率

実際に大型トラックへのリミッター取付義務が導入されてから、高速道路の死亡事故件数は減少傾向にあります。

リミッター導入後に国土交通省が行った調査データによると、平成17年の大型トラックによる死亡事故件数は、平成9年~14年の平均死亡事故件数の40%となっています。

一方、インターチェンジでの流入時における事故は増加傾向にあるというデータもあります。

普通車との速度差に原因があると思われ、「速度抑制装置付」ステッカーの認知度が上がることで改善されるのではという声もあります。

大型トラックのリミッターに感じるストレス

速度が90キロまでしか出せない

大型トラックのリミッターは90km/h前後で作動しますが、車種によって僅かな違いが生じます。

92km/hでリミッターが作動するトラックで走っていると、90km/hちょうどでリミッターが作動しているトラックにじわじわと追いついてしまいます。

そこで追い越しをしたいところですが、ほとんど速度差のない車両を追い越すのには時間がかかります。

一気に加速することができない以上、じわじわと並んで追い越しを行わなければならず、そのもどかしさは大型ドライバーにとってストレスになってしまいます。

普通車にあおられる

普通車の高速道路での制限速度は100km/hのため、大型トラックとは20km/hの速度差があります。このため普通車にあおられることがしばしばあり、ドライバーのストレスになってしまいます。

大型同士の追い越しのため追い越し車線に入った場合ももちろんですが、合流でも大型の速度制限を知らない普通車にあおられることが多く、ストレスを感じる大型ドライバーも少なくありません。

大型トラックにリミッターがあることがもっと周知されれば、こうしたストレスは軽減されるでしょう。

均一速度での運転がつらい

リミッターが作動するとアクセルペダルを踏み込んでも加速しませんから、大型トラックで高速道路を走行する際には速度調整の必要もなく、ずっと同じ感覚でペダルを踏み続けることになります。

必然的に運転は普通車以上に単調になり、飽きがくるだけでなく眠気を誘うこともあります。

特に夜間走行がメインになると、景色を楽しむこともなく、淡々と同じ速度でトラックを走らせなければならず、多かれ少なかれストレスを感じることになります。

大型トラックのリミッターは解除できる?

リミッターは解除できるか

結論から言ってしまえば、リミッターを解除することは物理的には可能です。ちょっと調べれば道具を入手することもできるので、やろうと思えばできるのは事実です。

けれど、大型トラックへのリミッター取付は法律で義務付けられていますので、解除すれば道路運送車両法の違反となります。

また、リミッターを解除する部品を取り付けて走行すると、デジタコ上の距離と辻褄が合わなくなってしまいます。物理的に解除しようと思えばできないことはありませんが、すべきではありません。

違反車は通報対象

リミッターが作動する速度に多少のバラつきはあるものの、大型トラックが90km/hを大きく上回る速度で走行していれば、リミッターを解除していることは周囲の運転手にもわかります。

全国トラック協会や運輸局には、こうした違反車を通報する制度があります。

目撃した日時や場所、速度、ナンバーや荷台の形状まで細かく通報できるフォームがWEB上にありますので、そこから誰でも通報することができます。

リミッター解除は「不正改造」

法で定められたリミッターを解除するわけですから、当然それは不正改造です。もちろん車検は通りませんし、発覚すれば運転手だけでなく、会社も処罰の対象となります。

実際に検挙された会社もありますし、通報制度によって発覚しやすくなっています。

会社によっては、リミッター解除が発覚すれば解雇としているところもあります。リミッターはそれだけ重要なものだということですね。

スピード違反だけならドライバーの責任ですが、リミッター解除は会社も罰せられてしまう重大な違反なのです。

大型トラックのリミッターのメリット

事故率の低下

先述したように、大型トラックにリミッターの取付が義務付けられてから、高速道路での大型トラックによる死亡事故率は低下しました。

車両によっては総重量20t以上にもなるトラックが制限速度を守らないことがどれほどの危険を伴うかが、リミッター導入後のデータからわかります。

そもそも大型の速度制限が80km/hであるのも、その車重が引き起こす重大事故のリスクを減らすためのもの。

運転するドライバーだけでなく、周囲の車も重大事故から守るための装置がリミッターなのです。

労務管理

大型トラックへのリミッター取付が義務となっているということは、無理難題を押し付ける顧客に対して「リミッターがあるから無理です」と断る武器にもなります。

「制限速度がありますから」だけでは納得してもらえなくても、物理的に速度が出せないのであれば、どうやっても応じられないと理解してもらう材料になるのです。

リミッターがある以上、配車係も無理な運行を組むことはできません。それでも無理をさせようとする会社であれば、ドライバーを大切にしていない会社ということになります。

まとめ

リミッターにストレスを感じるのも確かですが、それはあなたを守るための装置です。

そもそも大型トラックの高速道路での速度制限は80km/h。プロとしてハンドルを握る以上、周囲の模範となるような運転を心がけたいですね。

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